■ 杜甫 青年期の詩
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10 房兵曹胡馬詩
五言律詩。兵曹参軍事の任にある房氏の所有する西方産の馬についてのべた詩。 開元29年741年 三十歳ごろの作と推定される。
房兵曹胡馬詩
胡馬大宛名、鋒稜痩骨成。
竹批双耳峻、風入四蹄軽。
所向無空闊、真堪託死生。
驍騰有如此、万里可横行。
この西域の馬は大宛の誉れを担う、全体の骨組みは鋭く尖って引き締まる
両方の耳は竹を削いだように鋭く立ち、四つの蹄は風に吸われるように軽々とゆく
ゆくところ可ならざるはなく、まことに生命を託するに足りる
これほど勢いのある元気な馬があれば、万里の彼方へ自由自在にゆけるであろう
房兵曹がもっている胡馬は漢代大宛国からでた名馬のような駿馬であって、その肉おちた骨稗はふしこぶだって十分できあがっている。左右一対の耳は竹をそぎたるようにさかしくとがり、その走るときは四本の脚に風が生じて蹄かろらである。この馬の向う所千里の境野も眼中に置くに足らず、かかる馬こそ兵に死生を之に託することができる。かほどまでいさましくおどりあがる馬であれば万里の遠きも自由にあるきちらすことができる。
房兵曹は洛陽の友人のひとりで、名馬を所有していたので、杜甫はその馬を五言律詩に詠います。馬が大宛種の駿馬で、贅肉のないひきしまった体をしている。「竹批いで 双耳峻く」は名句とされて、後世でも駿馬の形容に使われています。蹄は風を吸うように軽々と空をけってゆく、このような馬であれば死生を託するに足りると軽快にいい。結びの二句は、こんなに良い馬を持っていることは君にとって前途洋洋だと贈っています。はじめ二句で導入、四句でその馬の良さを詠い、結び(尾聯)二句で抱負を述べる若き杜甫のお得意の律詩です。
房兵曹の胡馬の詩
胡馬(こば) 大宛(たいえん)の名(な)
鋒稜(ほうりょう) 痩骨(そうこつ)成る
竹批(そ)いで 双耳(そうじ)峻(するど)く
風入って 四蹄(してい)軽(かろ)し
向かう所 空闊(くうかつ)無く
真に死生(しせい)を託するに堪(た)えたり
驍騰(ぎょうとう) 此(かく)の如き有らば
万里 横行(おうこう)す可し