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魚玄機の詩


 322 魚玄機

844〜871 中国、晩唐の女流詩人。長安の人。字は尢(けいらん)・幼微。詩文の才能は抜群。女道士になる。召使いの女を殺して死刑になった。

 森鴎外の小説「魚玄機」の主人公である。森鴎外の小説により、日本では魚玄機の方が名を知られている。唐詩の世界は、男性世界であり、女性の感情が詩われる場合も、男性詩人の心を介在して述べられた。その中で、魚玄機の男性を思う愛の詩は、女性の声を伝えるものとして異彩を放っている。

 魚玄機は十六歳の時より、唐代に盛隆をえた道教の清虚(欲望を去て清な心境)に憧れた。後年、道士であるが、詩に「多情は是れ足愁」と語り、恋愛感情を捨てきれなかった。

 長安の北里。愛する男性を、侍女から奪われたと思い、咄嗟に殺した。彼女の詩の個性、強烈な性格は妓女の金と色の世界で養育され、唐詩の中でも一閃光る、存在感充分である。

秋思  酬李学士寄箪  和新及第悼亡  江行  江行 (其の二)  聞李端公垂釣回寄贈  題隠霧亭  重陽阻雨  送別  迎李近仁員外  江陵愁望寄子安  戯贈  留別広陵故人  名月夜留別  得閻伯釣書   賦得江辺柳  寄国香

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  遊崇真観南楼観新及第題名処
雲峰満目放春晴        雲峰 満目 春晴を放つ
歴歴銀鈎指下生        歴歴たる銀鈎 指下に生ず
自恨羅衣掩詩句        自から羅衣の詩句を掩うを恨む
挙頭空羨榜中名        頭を挙げ空しく羨ましむ榜中の名

  秋思
自歎多情是足愁        自から多情 是れ愁うに足るを歎ず
況當風月満庭秋        況んや當に風月 庭に満つる秋なるべし
洞房偏與更声近        洞房 偏えに與ごとく更に声は近し
夜夜燈前欲白頭        夜夜 燈前 白頭ならんと欲す 

 
  酬李学士寄箪
珍箪新鋪翡翠楼        珍箪 新しく鋪く翡翠の楼 
泓澄玉水記方流        泓澄の玉水 方に流れを記す 
惟應雲扇情相似        惟だ應さに雲扇の情相い似たるべし
同向銀牀恨早秋        同じく銀牀に向かい早秋を恨む

 和新及第悼亡
一枝月桂和烟秀        一枝 月桂 烟に和して秀なり
満樹江桃帯雨紅        樹に満つ江桃 雨を帯びて紅なり
且酔尊前休悵望        且く尊前に酔うて悵望するを休めよ
古来悲楽與今同        古来 悲楽は 今と同じ

  江行
大江横抱武昌斜        大江 横に武昌を抱いて斜なり
鸚鵡洲前満戸家        鸚鵡洲前 満戸の家
畫舸春眠猶未穏        畫舸 春眠 猶ほ未だ穏ならず
夢為蝴蝶也尋花        夢に蝴蝶と為り也た花を尋ねる

  江行 (其の二)
煙花已入[盧 鳥]鵐巷      煙花 已に[盧 鳥]鵐巷に入る
畫舸猶沿鸚鵡洲         畫舸 猶ほ沿う鸚鵡洲
酔臥醒吟都不覚         酔臥 醒吟 都て覚えず
今朝驚在漢江頭         今朝 驚く漢江の頭りに在るを

  聞李端公垂釣回寄贈
無限荷香染暑衣      無限の荷香 暑衣に染める
阮郎何処弄船帰      阮郎 何処ぞ船を弄して帰る 
自慚不及鴛鴦侶      自ら慚ず鴛鴦の侶に及ばざるを
猶得双双近釣磯      猶ほ双双 釣磯に近きを得る
 
  題隠霧亭
春花秋月入詩篇      春花 秋月 詩篇に入る
白日清霄是散仙      白日 清霄 是れ散仙
空捲珠簾不曾下      空しく珠簾を捲いて曾はち下さず
長移一榻対山眠      長しえに一榻を移し山に対して眠る

  重陽阻雨
満庭黄菊籬辺折      満庭の黄菊 籬辺に折く
両朶芙蓉鏡裏開      両朶の芙蓉 鏡裏に開く
落帽台前風雨阻      落帽台前 風雨阻だつ
不知何処酔金杯      知らず何処か金杯に酔うを 

  送別
秦楼幾夜適心期      秦楼 幾夜か心期に適う
不料仙郎有別離      料らずも仙郎 別離あり
睡覚莫言雲去処      睡り覚めて言う莫かれ雲の去りし処
残灯一盞野蛾飛      残灯 一盞 野蛾が飛ぶ

  送別(其の二)
水流逐器知難定      水流 器を逐うて定め難きを知る
雲出無心肯再帰      雲出で無心 肯えて再帰す
惆悵春風楚江暮      惆悵す春風 楚江の暮
鴛鴦一双失群飛      鴛鴦一双 群に失して飛ぶ

  迎李近仁員外
今日喜時聞喜鵲      今日 喜ぶ時 喜鵲を聞く
昨宵灯下拝灯花      昨宵 灯下 灯花を拝す
焚香出戸迎潘岳      香を焚き戸を出で潘岳を迎える
不羨牽絲織女家      羨まず絲を牽く織女の家 

  江陵愁望寄子安
楓葉千枝復萬枝      楓葉千枝 復た萬枝
江湖掩映暮帆遅      江湖掩映 暮帆 遅し
憶君心似西江水      憶う君が心は西江の水に似たるを 
日夜東流無歇時      日夜 東流 歇む時なし 

  戯贈
暫到崑崙未得帰      暫らく崑崙に到り未だ帰ること得ず
阮郎何事教人非      阮郎 何事ぞ人をして教えるに非らず
如今身佩上清録      如今 身に上清録を佩びる
莫遣落花霑羽衣      遣わす莫れ落花の羽衣に霑すを

  留別広陵故人
無才多病分龍鍾      才 無き多病 龍鍾と分れる 
不料虚名達九重      料らずも虚名 九重に達す
仰愧弾冠上華髪      仰愧す弾冠 華髪に上るを 
多慙払鏡理衰容      慙ずこと多し鏡を払い衰容を理める

  名月夜留別
離人無語月無声      離人語なし月 声なし
名月有光人有情      名月光あり人に情あり
別後相思人似月      別後相い思う人 月に似たり
雲間水上到層城      雲間水上 層城に到る

  偶居
心遠浮雲去不還      心遠 浮雲 去りて還らず
心雲併在有無間      心雲 併せて有無の間に在り
狂風何事相揺蕩      狂風 何事ぞ相い揺蕩
吹向南山復北山      吹いて南山に向い復た北山

  得閻伯釣書
情来対鏡懶梳頭      情来り鏡に対し頭を梳ずるに懶うし
暮雨蕭蕭庭樹秋      暮雨蕭蕭 庭樹の秋
莫怪欄干垂玉筋      怪しむ莫れ欄干 垂玉筋
只因惆悵対銀鈎      只だ惆悵に因って銀鈎に対す

  

  賦得江辺柳

翠色連荒岸      翠色 荒岸に連なる

煙姿入遠楼      煙姿 遠楼に入る

影鋪秋水面      影は鋪く秋水の面

花落釣人頭      花は落つ釣人の頭

根老蔵魚窟      根老 魚窟を蔵す

枝低繋客舟      枝低 客舟を繋ぐ

瀟瀟風雨夜      瀟瀟たり 風雨の夜

驚夢復添愁      夢に驚き復た愁を添える

  寄国香

旦夕酔吟身      旦夕 酔吟の身

相思又此春      相い思う又 此の春

雨中寄書使      雨中 書を寄せる使

窓下断腸人      窓下 断腸の人

山捲珠簾看      山は珠簾を捲いて看る

愁随芳草新      愁は芳草に随って新なり

別来清宴上      別来 清宴の上

幾度落梁塵      幾度か 梁塵に落つ



    

  

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