王昭君を詠う(3)于巓採花 李白35
李白35 王昭君を詠う(3)
于巓採花 うてんさいか
李白 王昭君を詠う 二首
五言絶句 王昭君
雑言古詩 王昭君
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王昭君 二首 白楽天
于巓採花人 自言花相似
明妃一朝西入胡 胡中美女多羞死
乃知漢地多名珠 胡中無花可方比
丹青能令醜者妍 無鹽翻在深宮裡
自古妬蛾眉 胡沙埋皓齒
于巓
うてんで花をつむ人は
自分で花そっくりの美人だといっている。
王昭君がある日 西のかた勾奴に嫁いると
勾奴の美人たちは恥じて死んでしまった。
そこでわかったことだが中国には美人が多く
勾奴の花の美人などくらべものにならないと。
絵の具が醜いものを美しくして
無塩などという醜女が宮中にいるのだ。
むかしから美人はねたまれ
沙漠にその身を埋めるのだ。
于巓 花を採る
于巓(ウテン) 花を採るの人
自らいふ花とあひ似たりと。
明妃一たび西のかた胡に入れば
胡中の美女 多く羞ぢて死す。
すなはち知る漢地の名珠(メイシュ※1) 多く
胡中に花の方比(たぐ) ふべきなきを。
丹青※2よく醜者をして妍(かほよ)からしめ
無塩(ブエン※3) のかへって深宮の裡(うち)にあるを。
古より蛾眉を妬(ねた)み
胡沙 皓歯を埋む。
※1美人。※2 赤と青の絵の具。※3齋の宣王の妃で、有名な不美人。
于巓は今の新疆省のコータンにあった国名であるが、李白はこれらの地名を当たり障りのない地方名に変えて歌っている。
王昭君の行った匈奴とはちがふ方面である。いずれにしても塞下詩、関山月、王昭君、古風の内容の作品は、無冠、無名の李白が世に知られていくきっかけになった詩と考える。