李白41 烏夜啼
李白41烏夜啼
李白は北辺の旅からむなしく長安にもどってきたが、その後もしばらく都にとどまっていても仕官のあてがあるわけではない。李白も一人で酒を飲み、一人詠う。まるで、カラスが鳴いているのと同じに映ったのか・・・・・・。
烏夜啼
黄雲城辺烏欲棲、帰飛唖亜枝上啼。
機中織錦秦川女、碧紗如煙隔窓語。
停梭悵然憶遠人、独宿弧房涙如雨。
黄色い夕靄が城壁になびくころ、烏はねぐらにつこうとし、飛んで帰って、枝にとまってかあかあと鳴く
織機(はた)を前に 錦を織っている長安の女、青いうす絹のカーテンは霞のよう窓越しに一人ごと。
織機の杼(ひ)をとめて 心痛めて遠くの人を憶う、誰もいない部屋にひとり寝してると 涙は雨のように濡らす。
烏夜啼(うやてい)
黄雲(こううん) 城辺 烏(からす)棲まんと欲し
帰り飛び 唖唖(ああ)として枝上(しじょう)に啼く
機中(きちゅう) 錦を織る 秦川(しんせん)の女
碧紗(へきさ) 煙の如く 窓を隔(へだ)てて語る
梭(ひ)を停め 悵然(ちょうぜん)として遠人を憶う
独り弧房(こぼう)に宿(しゅく)して 涙 雨の如し
烏夜啼
「烏夜啼」は楽府にある。
南北朝、宋の臨川王劉儀慶が彭城王劉義康との関係で文帝に怪しまれ、自宅謹慎させられッていたとき、カラスが夜なくのを聞いた女性が「明日はきっとお許しがありましょう。」と予言した。予言は当たったばかりかその年のうちに南袁州の刺史となった。そのことを感謝してこの歌を作った。
この詩は夫を兵役に出している妻の夫を想う思婦詩になっている。李白としては、同じようにカラスが鳴いていた、自分も官職に取り上げてくれる予言をしてほしいと思ったことからこの詩を詠ったのか。
黄雲城邊烏欲棲
黄色い夕靄が城壁になびくころ、烏はねぐらにつこうとし。
・黄雲:夕暮れの雲。黄土の砂煙。 ・城邊:城塞一帯。 ・烏:カラス。 ・欲:…よう。…う。…たい。 ・棲:鳥が巣に宿る。すむ。
歸飛??枝上啼
飛んで帰って、枝にとまってかあかあと鳴く。 ・??:〔ああ〕からすなどの啼き声。カーカー。 ・啼:〔てい〕(鳥や虫が)鳴く。
機中織錦秦川女
織機(はた)を前に 錦を織っている長安の女。 ・機中:機(はた)で織り込む。 ・機:はた。はたおる。 ・織錦:錦を織る。夫を思い慕ったことばを回文で織り込む。 ・秦川女:蘇宦i蘇若蘭)のこと。この句は『晋書・列伝第六十六・列女・竇滔妻蘇氏』砂漠方面に流された夫を思う妻の典型を引用。秦川は長安地方を指す。夫が秦川刺史であったことによるための言い方。回文の錦を織った妻のことで竇滔とうとうの妻の蘇宦i蘇若蘭)のこと。回文:順序を逆に読めば、別の意味になる文のこと。
碧紗如烟隔?語
青いうす絹のカーテンは霞のよう窓越しに一人ごと。
・碧紗:緑色のうす絹のカーテン。女性の部屋を謂う。 ・如烟:けむっているかのようである。 ・隔?語:窓を隔てて話す。
停梭悵然憶遠人
織機の杼(ひ)をとめて 心痛めて遠くの人を憶う。 ・停梭:ひを(一時的に)とめる。 ・梭:〔さ〕ひ。おさ。機織りの道具。横糸を通す管のついているもの。 ・悵然:恨み嘆くさま。 ・憶:思い出す。 ・遠人:〔えんじん〕遠いところにいる人。遠方へ戦争や守備で行っている人。
獨宿空房涙如雨
誰もいない部屋にひとり寝してると 涙は雨のように濡らす。
・獨宿:ひとりで泊まる。 ・空房:誰もいない家屋。「孤房」ともする。 ・如雨:雨のようである。
同時代人である高適の『別董大』に「十里黄雲白日?,北風吹雁雪紛紛。莫愁前路無知己,天下誰人不識君。」とある。
(1)南唐後主・李U 『烏夜啼』
昨夜風兼雨,簾帷颯颯秋聲。
燭殘漏斷頻欹枕,起坐不能平。
世事漫隨流水,算來夢裏浮生。
醉ク路穩宜頻到,此外不堪行。
(2)『烏夜啼』
無言獨上西樓,月如鈎。
寂寞梧桐深院 鎖C秋。
剪不斷,理還亂,是離愁。
別是一般滋味 在心頭。
(3)『晋書・竇滔妻蘇氏』
竇滔妻蘇氏,始平人也,名宦C字若蘭,善屬文。
滔苻堅時爲秦州刺史,被徙流沙,蘇氏思之,織錦爲回文旋圖詩以贈滔。
宛轉循環以讀之,詞甚淒?,凡八百四十字,文多不録。
陸游 『C商怨』
葭萠驛作「江頭日暮痛飮,乍雪晴猶凛,山驛凄涼,燈昏人獨寢。
鴛機新寄斷錦,歎往事、不堪重省,夢破南樓,拷_堆一枕。
宋・劉克莊 『玉樓春』戯林推
年年躍馬長安市,客舍似家家似寄。
錢換酒日無何,紅燭呼盧宵不寐。
易挑錦婦機中字, 難得玉人心下事。
男兒西北有~州,莫滴水西橋畔涙。