38酬坊州王司馬与閻正字対雪見贈
李白38 酬坊州王司馬与閻正字対雪見贈
坊州(陝西省黄陵県)へ行って州司馬(従六品)の王嵩(おうすう)と閻正字(えんせいじ)に会って就職運動をしている。
詩は坊州での雪見の宴席で王嵩と閻正字から遠山の雪についての詩を贈られ、李白がそれに和する詩を作った。まず自分が中国の東南の地方から「宛」(南陽)を経て都へ上ってきたこと。それから西北の?州を経て坊州にきたこと、晋の?康(けいこう)が呂安(りょあん)と親密に行き来したように王司馬と逢うことができて嬉しいと述べ、かねてからお名前を承知していたと述べている。
(酬坊州王司馬与閻正字対雪見贈 李白全集18巻)
酬坊州王司馬與閻正字對雪見贈
游子東南來、自宛適京國。
飄然無心云、倏忽復西北。
訪戴昔未偶、尋稽此相得。』
愁顏發新歡、終宴敘前識。
閻公漢庭舊、汎郁富才力。
價重銅龍樓、聲高重門側。
寧期此相遇、華館陪游息。
積雪明遠峰、寒城鎖春色。』
主人蒼生望、假我青云翼。
風水如見資、投竿佐皇極。』
さすらいのわたしは東南から来り、南陽をへて都にやってきた
流れゆく無心の雲のように、たちまち西北の地にいたる
昔王子猷が戴安道を訪ねて遇えず、いまここに ?康を尋ねて会うことができた』
愁い顔は新しい歓びにかわり、宴会を終えてお名前は承知していたと申しあげる
閻公はかつて宮廷に仕えた方で、充分な才力を備えておられる
その声価は龍楼門内に重く、名声は宮廷の門傍(もんぼう)に高い
いま思いがけなくここに出逢い、結構な屋敷の宴会に相判する
おりしも 遠くの山の積雪は明るく輝き、城内の春の気配は 寒さで凍りついている』
主人は民の希望の星であるから、私に青雲の翼を貸してください
風水による助けがあるならば、釣り竿を投げ捨てて王道の補佐をいたす所存です』
?康は竹林七賢のひとり。竹林に入り、清談にふけった。あるとき訪ねてきた鍾会に挨拶せず、まともに相手をしなかった。 その?康に逢うことができた、会えた喜びを表している。
閻正字(えんしょうじ)にお世辞を言っている。正字(正九品下)は秘書省の属官で、進士及第者が最初に任官する官職のひとつ。閻正字が坊州にいるのは転勤してきたためで、李白は閻という若い官吏を旧職で呼ぶことで進士及第の秀才であることをほめているのだ。李白はかなり焦っていた。最後の四句は、王司馬に対してチャンスがほしい、風水を持ち出して就職斡旋を述べている。
國。北。得。識。力。側。息。色。翼。極。
坊州の王司馬と閻正字と雪に対して贈らるるに酬ゆ
遊子(ゆうし) 東南より来り
宛(えん)より京国(けいこく)に適(ゆ)く
飄然(ひょうぜん)たり無心の雲
倏忽(しゅくこつ)として復(ま)た西北
戴(たい)を訪うて 昔未だ偶(ぐう)せず
?(けい)を尋ねて 此(ここ)に相(あい)得たり
愁顔(しゅうがん) 新歓(しんかん)を発し
宴(えん)を終えて 前識(ぜんしき)を敍(じょ)す
閻公(えんこう)は漢庭(かんてい)の旧
沈鬱(ちんうつ)として才力に富む
価(か)は銅龍(どうりゅう)の楼に重く
声は重門(じゅうもん)の側(かたわら)に高し
寧(なん)ぞ期せんや 此(ここ)に相遇い
華館(かかん) 遊息(ゆうそく)に陪(ばい)す
積雪(せきせつ) 遠峰(えんぽう) 明らかに
寒城(かんじょう) 春色(しゅんしょく) 沍(こお)る
主人は蒼生(そうせい)の望(ぼう)
我に青雲の翼(つばさ)を仮(か)し
風水(ふうすい) 如(も)し資(たす)けらるれば
竿(かん)を投じて皇極(こうきょく)を佐(たす)けん
酬坊州王司馬與閻正字對雪見贈
游子東南來。自宛適京國。飄然無心云。倏忽復西北。
訪戴昔未偶。尋稽此相得。愁顏發新歡。終宴敘前識。
閻公漢庭舊。汎郁富才力。價重銅龍樓。聲高重門側。
寧期此相遇。華館陪游息。積雪明遠峰。寒城鎖春色。
主人蒼生望。假我青云翼。風水如見資。投竿佐皇極。
李白は就職運動のために坊州のような北辺の街まで行ったが、ここでも成果は得られず、留別の詩を残して長安にもどった。