43杜陵絶句 44春夜洛城聞笛
李白43 杜陵絶句 春夜洛城聞笛
五言絶句
杜陵絶句
南登杜陵上、 北望五陵間。
秋水明落日、 流光滅遠山。
南のかた杜陵の上に登り、北のかた五陵の間を望む
秋水 落日明らかに、流光 遠山滅す
長安城の南杜陵の上に登り、そこから北のかた五陵の間を望む、川の流れに落日が反映し、流れ行くその光は遠い山々の間に消えていく

赤枠は長安の城郭 長安城郭の右下に杜陵がある
杜陵とは前漢の宣帝の墓稜で長安の(城郭の右下)東南にある。小高い丘の上にあり、見晴らしが良いところだ。五陵は長安の北東から北西にかけて、渭水の横門橋わたって東から安陵(恵帝)、陽陵(景帝)、長陵(高祖)、平陵(昭帝)、茂陵(武帝)と咸陽原にある。杜陵からの距離は、30km〜50km。
○韻 間、山。
五陵原という皇帝の陵墓区で、西から茂陵、平陵、延陵、渭陵、義陵、安陵、長陵、陽陵の9つが並んでいる。このうち長陵は高祖・劉邦の陵、茂陵は武帝の陵。ほとんどの皇帝陵に皇后陵が併設されており、有名な呂后の様に皇后の地位が高かったことの現れと言われてる。皇帝が西、皇后が東。延陵の場合、右上(東北)にやや規模の小さな皇后陵が見える。また東端にある陽陵は周囲が発掘されて兵馬俑が出土、博物館として公開されている。
李白は杜陵の上からはるか北の方向を望んだといっている。前景には長安の街並が広がり、遠景には五陵の輪郭が胃水の流れに映っていたことだろう。
南登杜陵上、 北望五陵間。
秋水明落日、 流光滅遠山。
南のかた杜陵の上に登り、北のかた五陵の間を望む
秋水 落日明らかに、流光 遠山滅す
李白44 春夜洛城聞笛
七言絶句
春夜洛城聞笛
誰家玉笛暗飛聲,散入春風滿洛城。
此夜曲中聞折柳,何人不起故園情。
どこで笛を吹いているのだろうか、宵闇に笛の音(ね)(だけ)が聞こえてくるが、散らばって(春風に)乗って洛陽城に(笛の音が)満ちている。
この夜、(流れてくる)曲中に、(別れの曲)折楊柳の曲が聞こえてきた、誰が故郷を思う気持ちを起こさないだろうか。いや、起こす。
春夜 洛城に 笛を聞く
誰が家の玉笛ぞ 暗に 聲を飛ばす,
散じて 春風に 入りて 洛城に 滿つ。
此の夜 曲中 折柳を 聞く,
何人か 故園の情を 起こさざらん。
春夜洛城聞笛
春の夜に洛陽の街で(「折楊柳」の曲を奏でる)笛をきく。
同様のモチーフのものに、王翰の『涼州詞』「秦中花鳥已應闌,塞外風沙猶自寒。夜聽胡笳折楊柳,ヘ人意氣憶長安。」や、李益の『夜上受降城聞笛』に「囘樂峯前沙似雪,受降城外月如霜。不知何處吹蘆管,一夜征人盡望郷。」 がある。
誰家玉笛暗飛聲
どこで笛を吹いているのだろうか、宵闇に笛の音(ね)(だけ)が聞こえてくるが。 ・誰家:どこ。だれ。 *かならずしも「だれの家」と、住処を尋ねていない。 ・玉笛:宝玉でできた笛。立派な笛。 ・暗:暗闇に。宵闇に。或いは、密やかに。 ・飛聲:笛の音を飛ばす。笛の音を流す。 ・聲:ひびき。おと。ふし。
散入春風滿洛城
散らばって(春風に)乗って洛陽城に(笛の音が)満ちている。 ・散入:散らばって(春風に)乗って。 ・洛城:洛陽城。東都洛陽の都。洛陽の街。 ・城:都市。城市。都会。街。
此夜曲中聞折柳
この夜、(流れてくる)曲中に、(別れの曲)折楊柳の曲が聞こえてきた。 ・曲中:玉笛の聲裏ということ。 ・折柳:折楊柳のこと。横吹曲の一。別れの情をうたった曲名。別離の折り、水の畔まで見送り、柳の枝を折って贈った故事に基づくもの。前出、『涼州詞』「夜聽胡笳折楊柳,ヘ人意氣憶長安。」の影響を受けていよう。
何人不起故園情
誰が故郷を思う気持ちを起こさないだろうか。いや、起こす。 ・何人:〔なんびと〕誰。 ・不起:起こさない。 ・何人不起:誰が起こさないだろうか。いや、起こす。〔何+(名詞) 不+(動詞)〕:反語反問の気勢の語形。王維に『胡居士皆病寄此詩兼示學人』に「植福祠迦葉,求仁笑孔丘。何津不鼓櫂,何路不摧。」とある。 ・故園:故郷。 ・情:想い。 ・故園情:故郷を思う気持ち。郷愁。