64春怨


李白64春怨


春怨
白馬金羈遼海東、羅帷?被臥春風。
落月低軒窺燭盡、飛花入?笑床空。


白い馬にまたがり、金の手綱を握りしめた夫は、遼海の東へ出征している。うすぎぬの帳のなかで、刺繍で飾った布団をかけているところに、春風が吹いてきた。
しずみかけた月が軒端より低い空から、ともしびの燃えつきた部屋の中をのぞきこむ。飛びちる花びらが家の中へ入ってきて、寝床がからっぽなのをあざわらう。


白馬金羈遼海東、羅帷?被臥春風。
白い馬にまたがり、金の手綱を握りしめた夫は、遼海の東へ出征している。うすぎぬの帳のなかで、刺繍で飾った布団をかけているところに、春風が吹いてきた。
○白馬金羈 金をよりこんだ白い手綱。若い貴族の出征。 ○遼海 現在の遼寧省。南満州。○羅帷 うすぎぬのとばり。○?被 刺繍で飾ったかけ布団。


落月低軒窺燭盡、飛花入?笑床空。
しずみかけた月が軒端より低い空から、ともしびの燃えつきた部屋の中をのぞきこむ。飛びちる花びらが家の中へ入ってきて、寝床がからっぽなのをあざわらう。
 ○落月 沈みかけた月。沈みかけた月は性を連想させる。 ○燭 ともしび。 ○飛花 春満開の花びらが舞い散っている。

宴も開かれて世間は賑やかにしている。貴族の妻妾について詠っている。
 出征した夫の妻が夫を心配して悶々としている雰囲気は全く感じられない。唐時代に流行した詩は、「出征した夫は私のことを思い出して、涙しているだろう。」というものだった。ここで取り上げた詩は、李白の芸術的な題材のとらえ方であった。


白馬 金羈(きんき)遼海の東、 羅帷(らい)?被(しゅうひ)春風に臥す。
落月 軒に低(たれ)て 燭の盡くるを窺(うかがい)。 飛花 ?に入って 床の空しきを笑う。