東陽谿中贈答 謝霊運 詩


謝靈運  東陽谿中贈答  
           
可憐誰家婦,緑流洗素足。
明月在雲間,迢迢不可得。

可愛らしいのは、どの家にいる婦人か、澄み切った流に、白い足を洗っている。
明月は、雲のむこうにあるもの、遥か彼方の存在だから、手にいれることはできない。

東陽谿中 贈答
憐れむ 可(べし)  誰(た)が家の 婦(おんな)ぞ,?流に 素足を 洗ふ。
明月  雲間に 在り,迢迢(ちょうちょう)として  得 可(べ)からず。


可憐誰家婦、縁流洗素足。
可愛らしいのは、どの家にいる婦人か、澄み切った流に、白い足を洗っている。
・可憐 愛すべき。可愛らしい。 ・誰家 どこの。 ・婦 おんな。 ・?流:谷川の流れに沿って。 ・洗 あらう。 ・素足 白い足。 ・素:白い。

明月在雲間、迢迢不可得。
明月は、雲のむこうにあるもの、遥か彼方の存在だから、手にいれることはできない。 
・明月 澄みわたった月。 ・雲間:雲の間。 ・迢迢 (ちょうちょう) 遥か。遠い。高い。 ・不可得 得ることができない。


登池上樓
作者:謝靈運
昭明文選・卷二十二
潛叫媚幽姿,飛鴻響遠音。
薄霄愧雲浮,棲川乍淵沈。
進コ智所拙,退耕力不任。
徇祿反窮海,臥痾對空林。
衾枕昧節候,襄開暫窺臨。
傾耳聆波瀾,舉目眺嶇欽。
初景革緒風,新陽改故陰。
池塘生春草,園柳變鳴禽。
祁祁傷幽歌,萋萋感楚吟。
索居易永久,離群羣處心。
持操豈獨古,無悶徴在今。

登石門最高頂
晨策尋絶壁,夕息在山棲。
疏峰抗高館,對嶺臨迴溪。
長林羅戸穴,積石擁基階。
連巖覺路塞,密竹使徑迷。
來人忘新術,去子惑故蹊。
活活夕流駛,檄檄夜猿啼。
沈冥豈別理,守道自不攜。
心契九秋幹,目翫三春夷。
居常以待終,處順故安排。
惜無同懷客,共登青雲梯。

從斤竹澗越嶺溪行
猿鳴誠知曙,谷幽光未顯。
巖下雲方合,花上露猶玄。
逶施傍隈奥,召遞陟径見。
過澗既視},登棧亦陵緬。
川渚婁逕復,乘流翫迴轉。
蘋萍泛沈深,菰蒲冒清淺。
企石邑飛泉,攀林適葉卷。
想見山阿人,薜蘿若在眼。
握蘭勤徒結,折麻心莫展。
情用賞為美,事昧竟誰辨。
觀此遺物慮,一悟得所遣。


謝霊運 385〜433南朝の宋420〜479の詩人。永明体。陽夏(河南省)の人。永嘉太守・侍中などを歴任。のち、反逆を疑われ、広州で処刑された。江南の自然美を精緻(せいち)な表現によって山水詩にうたった。

六朝時代を代表する門閥貴族である謝氏の出身で、祖父の謝玄は?水の戦いで前秦の苻堅の大軍を撃破した東晋の名将である。祖父の爵位である康楽公を継いだため、後世では謝康楽とも呼ばれる。聡明で様々な才能に恵まれたが性格は傲慢で、大貴族出身だったことも災いし、後に刑死した。

406年、20歳の時に起家した。420年、東晋に代わって宋が建てられると、爵位を公から侯に降格された。少帝の時代に政争に巻き込まれ、永嘉(現浙江省温州市)の太守に左遷させられるも、在職1年で辞職、郷里の会稽に帰って幽峻の山を跋渉し、悠々自適で豪勢な生活を送った。この時に他の隠士とも交流し、多くの優れた詩作を残した。

424年、文帝が即位すると朝廷に呼び戻されて、秘書監に任ぜられ、『晋書』の編纂などに従事した。その後、侍中に遷った。しかし、文帝が文学の士としてしか待遇しないことに不満を持ち、病気と称して職を辞し、再び郷里に帰った。

再度の帰郷後も山水の中に豪遊し、太守と衝突して騒乱の罪を問われた。特赦により臨川内史に任ぜられるが、その傲慢な所作を改めなかったことから広州に流刑された。その後、武器や兵を募って流刑の道中で脱走を計画したという容疑をかけられ、市において公開処刑の上、死体を晒された。